デジカメと私。


***** そうだ、動画を撮ろう! *****



そう思い立って、私はデジカメを手に
そっと、
そぉ…っと、
物音を立てないようにして弟の部屋に向かった。


弟は今、パパからお仕置きを頂いているはずだ。


…なにをしたのか?
私がママからのお説教を盗み聞きした限りでは、
塾をサボってゲームセンターで遊んでいたことがバレたようだ。

ばかだなぁ。
息抜きはもっと要領良くやらなきゃ。

まぁ。
ママからさんざん叱られた後で、
パパの仕上げじゃあ、同情はするけど。

…痛いよね。
痛いだろうなぁ。

考えて、背筋がスッと冷える。
なんだかお尻がじんわり痛くなった気がする。
やだやだ。


我が家のお仕置きは、お尻を叩かれる。
パパもママも容赦なく。
ぺんぺん、
なんてかわいいものじゃない。
悪いことをしたら、例えそれが家でも外でも、バチンっ!
子どもの頃から、ずっとそう。


こんな家庭はウチだけかしら。
そう思ってネットで調べたことがある。
そうしたら、
…………いっぱいいるんだね。

ウチみたいな教育方針のところから…、
単に『これ』が好きな人?

びっくりした。
どうして?
こんなに痛くて恥ずかしいことなのに!

もっと驚いたのは、
有料で動画が販売されていること。

売れるのっ?
……売れるのか。
……………ふぅん。



―――…と、いうわけで今現在に至る。



生意気な弟を懲らしめるためにも、使えるもんね。



+++



パァン、パァン、パァンっ!
弟の部屋からは、今すぐにでも耳を塞ぎたくなるような音が聞こえてくる。

“ごめんなさいぃぃっ!”
ぐずぐずと鼻をすするような弟の涙声が聞こえた。

…うわぁ。やってる。
どうしよう。

ためらうけど…。
いやいや、思い出そう。
先週、ママからちょっぴり叱られた後の私を馬鹿にした、アイツのムカつく顔!

……うん。

私は廊下で膝立ちになって、
そぅっと、
ドアノブを握って、ゆっくり、ゆっくり回す。

時間をかけて、ゆっくりと、そっと開ける。
大丈夫。
お仕置き中だもん。
ふたりともきっと気付かないはず。

弟の部屋のドアが、細く開かれた。



+++


真っ暗な廊下から
光の差す部屋を
片目で、覗き込む。


あぁ。
眉間に皺を寄せた、パパの恐い顔が見える。

ベッドに腰掛けて、
膝に乗せた弟の、真っ赤に熟れたお尻に目がけて、
高く振り上げた平手を、
バチンっっと大きな音を立てて打ち込む姿だ。

パパのお仕置きは、痛い。
ママと違って、ひとつひとつが強くて、ものすごく重い。
1打、1打、耐えるのが精一杯になる。

弟は、打たれてうわぁんと声高に泣いた。

パァン!
『うっく。ごめ、さいぃ』
パァン!!
『…ぅ。もう、しませ…ん』
パァンっ!!
『ひっ、ぅ…。はんせ、してます…』
パァンっっ!
『うぇええん、いたいぃ!やだぁーっっ』

パァン、パァン、パァンっ!!

もう恥ずかしいとか思ってる余裕もないんだろうな。
少しでも逃げたくて、
身体を動かしたり、足を暴れさせたり、
その度に強くお尻を打つ音がする。

ママから叱られてた時は、泣く声なんて聞こえなかったのにな。

パァン、パァン、パァン!
パァン、パァン、パァン!!


かわいそうだな……。
助けてあげたいけど。

でも、
パパを怒らせたアンタが悪いんだよ?


+++


そうだ!
同情してる場合じゃない。

私は、本来の目的を思い出して、デジカメを構えた。

そうして、
ふと視線を戻した瞬間。


…パパと、

―――――――――――… 目 が 合 っ た 。







…的な。

だいぶ前に掲示板に出した作品です。
やっと作業できたー(めんどくさがりなんです)

その後は、言うまでもない展開になるかと。

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